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福田尚代 『ひとすくい』
2024年5月18日 - 6月29日 -
このたびKanda & Oliveiraでは福田尚代の個展「ひとすくい」を5月18日(土)から6月29(土)まで開催いたします。
福田尚代は「文字と言葉のアーティスト」と言われ、消しゴムや鉛筆、定規といった文房具や原稿用紙、それにハンカチや本といった、幼きころから身近にあるものを用いて作品を制作しています。同時に、最初から読んでも最後から読んでも同じ文章となる回文の詩集を複数刊行しています。
本展では6000個以上の消しゴムを彫刻したインスタレーション《漂着物/海辺の洞窟》のほか、本のページを折り込んだ《翼あるもの》、本のしおりをほぐして綿あめのようにした《書物の魂》、ギャラリーのある地から連想された回文作品、そして夢から着想した新作《夢ノート/袖の涙/泉》などを、海辺の洞窟や大きな船のようだと福田が感じた建物空間を存分につかって展覧いたします。
福田は、言葉や背景を消すことで自らも消滅していく存在の消しゴムは「この世界ではない別の場所」へ繋がる入口だといいます。その消しゴムを彫刻することは、「形作ることではなく、削ぎ落とし、形を手放すための行為」であり、存在と不在の意味を問いかける作品が見るものを魅了します。そして、「この世界ではない別の場所」の先には果てしない海原が広がっていると福田は考えます。寄せては返す波打ち際で、言葉の漂着物を是非お受け取りください。
協力:小出由紀子事務所、Switchback、株式会社中川ケミカル
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作者が幼い頃に本を読んでいた寝台、熱にうなされたときの水枕、学校の椅子、
小舟や墓標、手紙や浮き輪の形をした白い小さな物体が並んでいる。
すべて消しゴムを彫刻したものだ。
なくなるもの、消えゆくものに対して「束の間のかたち」を浮き上がらせることが美術だと福田は言う。
展示を重ねるごとに増えていく消しゴム彫刻たちは本展では6320個ほどまで増え、本展では建物からインスピレーションを得た
タイトルとなった。
1Fのインスタレーションビュー
《漂着物/海辺の洞窟》, 2002-2024
消しゴムに彫刻、針、糸、紙
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「
古い和歌には涙が染みこんだ袖が朽ちて境界を消していくような、 袖と涙を巡る描写が数多くあります。《夢ノート/袖の涙/泉》 は、じつはひそかな哀悼の時間から生まれました。ある夜、 私は涙で不思議なほど膨らみ、伸び、変形する袖の夢を見ました。 目覚めた後、その光景をノートに描き、 さらに色をかさねるうちに、涙が澄んだ泉となり、植物が芽生え、 星が流れ落ち、 なにか大切なものが抽出されていく実感を覚えたのです。 思えば幼少期から、 私は夢中に絵を描くことやいっしんに色を塗ることで浄化され、 助けられてきたのではなかったでしょうか。 このような素朴なまでの絵の作用にあらためて想いを馳せることは 、美術に纏わる希望をとり戻すことでもありました。」 -
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Naoyo Fukuda, 翼あるもの『ひかり埃のきみ』, The Winged: Selection from the Essential Works of Naoyo Fukuda, 2023
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Naoyo Fukuda, 翼あるもの『十五少年漂流記』, The Winged: Adrift in the Pacific, 2022
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Naoyo Fukuda, 翼あるもの『はてしない物語』, The Winged: The Neverending Story, 2022
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Naoyo Fukuda, 翼あるもの『青い鳥物語』, The Winged: The Blue Bird, 2022
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Naoyo Fukuda, 翼あるもの『海底二万海里』, The Winged: Twenty Thousand Leagues Under the Sea, 2022
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Naoyo Fukuda, 翼あるもの『ドリトル先生アフリカへ行く』, The Winged: The Story of Doctor Dolittle, 2022
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Naoyo Fukuda, 翼あるもの『大洪水』, The Winged: The Flood, 2022
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Naoyo Fukuda, 翼あるもの『リンバロストの乙女 下』, The Winged: A Girl of the Limberlost 2, 2022
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《翼あるもの》は福田の代表作のシリーズであり、本の頁を折り畳んだ作品である。
2022年に東京都庭園美術館で行われた「旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる」展に出品された作品の一部であるが、
本展では鑑賞者がそれぞれ異なる「翼」の形を上から見られるようになっている。
鑑賞者を出迎えているかのような《翼あるもの》や、作品同士が会話をしているような《翼あるもの》など、まるで作品から羽音さえ聞こえてくるようだ。
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作品写真提供: Kanda & Oliveira, 坂田 峰夫
展示風景写真提供: 高橋 宗正
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