井村一登: commission work
このたびKanda & Oliveiraでは井村一登の個展「commission work」を11月16日(土)から12月21(土)まで開催いたします。
本展ではギャラリーの全フロアを使い、東京・浜松町の世界貿易センタービル解体現場の瓦礫を素材に制作した鏡、写真や映像から複合的に、反射率と「手数料」をテーマにインスタレーションを展開します。井村が鏡制作で培ってきた手法をもとに、窓ガラスから金属やコンクリートなど、瓦礫の種類によって専門性の高い技法を使い分けて鏡の作品へと変容させました。
貿易とはモノやサービスの売り買いの取引を意味し、その取引は売主・買主だけでは完結せず、多くの人が関わりそこに手数料が発生します。
また、一般的に普及している鏡は反射率が83%以上(JIS規格)となっており、それが製品としての鏡の条件とも言えます。例えば、私たちが日常的に使っている洗面台のガラスミラーは反射率が約90%で、10%ほど再現性を欠いています。
「貿易」という名を冠する世界貿易センタービル解体現場で貰い受けたガラスを手にした井村は、私達が日々洗面台で自分を見るときに欠けている10%ほどの再現性は、貿易における手数料のように、鏡を見るものが自身を再現するために支払っている「手数料=commission」なのではないかと考えました。なぜなら、この展覧会のきっかけとなったのは、完全な反射などないとの考えを持つ井村が、私たちは鏡に映る像に知らず知らずのうちに代償を払っているのではないかと考えていたからでした。
鏡は見るものを完全に再現しているわけではなく、当たり前のように再現しているわけでもないのです。
協力:鹿島建設、海馬ガラス工房、株式会社Makership、硝子企画舎、SUWAガラスの里、そざいの生態JUKU by AGC、Switchback