福田尚代: ひとすくい
このたびKanda & Oliveiraでは福田尚代の個展「ひとすくい」を5月18日(土)から6月29(土)まで開催いたします。
福田尚代は「文字と言葉のアーティスト」と言われ、消しゴムや鉛筆、定規といった文房具や原稿用紙、それにハンカチや本といった、幼きころから身近にあるものを用いて作品を制作しています。同時に、最初から読んでも最後から読んでも同じ文章となる回文の詩集を複数刊行しています。
本展では6000個以上の消しゴムを彫刻したインスタレーション《漂着物/海辺の洞窟》のほか、本のページを折り込んだ《翼あるもの》、本のしおりをほぐして綿あめのようにした《書物の魂》、ギャラリーのある地から連想された回文作品、そして夢から着想した新作《夢ノート/袖の涙/泉》などを、海辺の洞窟や大きな船のようだと福田が感じた建物空間を存分につかって展覧いたします。
福田は、言葉や背景を消すことで自らも消滅していく存在の消しゴムは「この世界ではない別の場所」へ繋がる入口だといいます。その消しゴムを彫刻することは、「形作ることではなく、削ぎ落とし、形を手放すための行為」であり、存在と不在の意味を問いかける作品が見るものを魅了します。そして、「この世界ではない別の場所」の先には果てしない海原が広がっていると福田は考えます。寄せては返す波打ち際で、言葉の漂着物を是非お受け取りください。
協力:小出由紀子事務所、Switchback、株式会社中川ケミカル