1983年熊本県生まれ。東京都在住。
坂本は絵画を構築する独自の方法論を追究し、一人の作家が同じ時期に描いたとは思えないほど多様な作品を生み出す画家である。描くときに自身にルールや条件を課すことで制作行為の自由をあえて制限し、エラーや失敗と思える要素も含み込んでいくことで予測を超える絵画空間を実験的につくりだそうとする。それは予測に基づく最適解が重視される現代社会のなかで、そこから逃れる思考のモデルを絵画でつくる挑戦でもあると坂本はいう。
坂本はキャンバスに下描きをせず、部分から描いていく。完成図があらかじめ用意されていることはなく、描くプロセスにおいては「すべての一手が分岐点」だと彼女は考える。原則的に一度描いたところに後戻りはせず、部分ごとに完成させる。そのルールの下では、造形要素が画面に増殖していく過程で絵画空間におのずと歪みが生じる。初期から描かれてきた造形要素であるタイルが張りめぐらされた歪んだ空間に、自身の分身のような女性たちが描かれた作品は坂本の代表作となった。坂本が扱う要素はその後、ピクセルのような筆触やドット状の形態などへと展開され、近年では過去の様々なアーティストたちの造形実験も意識し、より原理的に描くことの思考を深めている。
愛知県立芸術大学美術学部油画専攻卒業、愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画・版画領域修了、愛知県立芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。